森博嗣『自分探しと楽しさについて』感想

森博嗣の『小説家という職業』がとても面白い本だったため、この『自分探しと楽しさについて』も読んでみた。

この本は、趣味を持っておらず、なにか楽しみを探している人向けの本だ。

 

自分探し、最近の若者について

タイトルにもある自分探しは「大学生が旅に出る」というイメージがあるが、これについて森博嗣は冷静に分析していた。

自分探しの旅というよりは、自分をアピールするためのアイテム探し、という意味合いになる。これは、けっこうなことである。非常に戦略的だし、抜け目ない発想である。ただ、だいぶまえから、海外へ行くことは珍しくなくなっていることに気づいていない、という点は少々心配である。

あまり考えたことはなかったけど、確かに自分探しというのは自分を目立たせるためのものだなあと思う。

アイテムを得るために旅を選んだのだとしたら、今の時代だと海外旅行は珍しくないので、手段が目的化してしまっているという感じだろうか。

 

なぜアイテムを得たいと思うかという所の分析も面白かった。これは環境要因であるようだ。

子供が減り、親戚が減り、会社勤めが増え転勤が多くなり、親戚との関係が疎遠になる。子供の大人との関わりが一昔前よりもかなり減っている現代。

こういった環境では家族以外の他者に「自分」を認めてもらう機会が日常にはない。家族は、本人が小さいときからずっとつき合っているわけだから、今さらアピールのしようがない。自分を売り込むようなことがないままに大学生になってしまうのだ。

 

森博嗣は現状分析が的確だなあ思う。「最近の若いもんは云々」という感情が一切ない。

この後も最近の若者は努力をしないということに対して、だいたいはただ「気合いが足りない」と片付けられることが多いのに、森博嗣の分析はそうではなく、「確かに!」と目から鱗の視点があった。なんとなく感じていた答えが出ているような気がした。

今も昔も人間自体はさほど変わらないはずなので、やはりこれも環境要因が大きかった。

 

おわり

『自分探しと楽しさについて』は、自分探しや楽しさについて考えている人でなくても十分に楽しめるし発見がある本だと思う。こういうのを社会学と言うのだろうか、現代の分析がとても的確な感じがして、読んでいてとてもスッキリする本だった。

 

 

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