地上波初放送記念。庵野秀明監督『シン・ゴジラ』はとにかくテンポがいい映画

庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』が地上波初放送された。僕は1年前に劇場で見ていて何度も見たい作品だと思ったから当然今回の地上波放送は見た。

1年前なので忘れているところもあったけど、大枠は覚えているので初見の時よりも俯瞰するというか色々考えながら見れた。やっぱり何度見ても面白い作品だと思う。

<ネタバレ含みます>

 

とにかくテンポが良くて見やすい映画

劇場で初めて見たときは最初から最後まで飽きることなく集中して見れた。2度目に見てわかったのが、この映画は本当にテンポがいいということだ。

 

東京湾に未確認のエネルギーを観測する政府。主人公の矢口だけが生物だと発言するが、政府のお偉いおっさんたちは否定する。そこにゴジラの巨大尻尾。うろたえる大人。この一連が気持ちいい。

政府の対応をどうするかよりも先に「正体を知りたい」と言ってしまう総理。

この冒頭のゴジラ出現に対する大人の狼狽がコミカルさもありつつ気持ちよかった。テンポがすごくよかった。

その後、焦らして焦らして上陸したゴジラはみんなが知ってるゴジラじゃなかった。誰も見たこのない通称蒲田くん。ゴジラの第二形態だ。

日本人ならほとんどの人が知っているであろうゴジラの見た目。ゴジラ映画を見たことがない人も知っているだろう。長年にわたってシリーズ化されている映画だしハリウッド映画化もしたしキャラクターとして有名な部類である。もちろん予告動画にもでてくる。

ここで周知のそれとは違うものが巨大生命体として初めて画面に現れる。視聴者は「ん?ゴジラじゃない?」と一瞬考えてしまう。

この掴みが最高だった。「これどうなるの?」とここで一気に引き込まれるのだ。

 

歴代最強ゴジラ

ゴジラシリーズを何作かしか見ていない僕がいうのも説得力はないけど、シン・ゴジラは歴代最強のゴジラだと思う。東京を焼き尽くした時の絶望感はすごかった。

米軍が「背後から回り込めばいける!」作戦の時のまさかの背びれ無差別ビームの切望感ったらない。「ゴジラつええええええ」と。

シン・ゴジラの強さは数字にも表れている。作中では「東京で360万人の生存者」というようなことを言っているが、あの大都市東京での生き残りが360万人しかいないということである。東京の人口は927万人。その半数以上の命が奪われたのだ。総理含む政府首脳陣もあの一夜で実にあっさりとやられている。

加えて、このゴジラは進化する。この先「大陸間を飛翔する」なんてことも作中で言われている。

ラストシーンにはさらなる進化への含みも持たせている。やっぱり歴代最強のゴジラだ。

 

攻撃許可を与えるか、究極の選択

シン・ゴジラ』の俳優陣は超豪華だ。内閣はほとんどが見たことのある名俳優で構成されている。にもかかわらず主人公は僕は知らない俳優(そこそこ有名らしいけど)だったので、個人的には何のバイアスもなく見れた。

中でも僕が一番いいなと思ったのは余貴美子の演技だ。攻撃許可の承諾を総理に得た時の表情が秀逸だった。攻撃すべきだけど総理にいちいち許可を得ないといけない焦燥みたいなものがその表情に詰まっていた。

いざ攻撃許可を得た時の、ちょっと嬉しそう、でいてそこまで表情には現れていない、思いの丈が垣間見えるような表情がとても良かった。組織の鈍足の歯がゆさとか自分の立場に自分でイラついている感じが奥底に見えるようだった。

 

で、一時は攻撃許可を出せなかった総理の気持ちもよくわかった。許可を与える寸前、その一帯に一般人がいたのだ。究極の選択だが総理は攻撃許可を与えなかった。

各担当に電話でたらい回し、というか許可を得てから、攻撃をどうするか総理の最終決定。この辺は現場との時間差が大きくなってしまう皮肉も込められている。

けれども一方で、国単位の決定ってこいういう究極の選択なのだろうから、現時点ではこうするしかないのだろうなということも思った。

戦争や災害はもとより、外交もきっとこんな究極の選択の連続なのだろう。現場との差はどうしても生まれてしまうのだろう。ベストじゃないけどベターであるように思う。個人の判断の即刻のゴーサインはちょっと怖い。

 

おわり

とかなんとか、色々と考える叩き台というか、刺激がたくさんあってやっぱり『シン・ゴジラ』はいい映画だと思う。何度見てもいい。

何年後かに見るのもまたいいだろう。そういえば『シン・ゴジラ』で海外特使としてくる石原さとみに公開当時は「こんなやついねえし来ねえよ」なんてネットで叩かれていたのが、1年後の現実はアメリカからトランプの娘イヴァンカがきてしかも服のブランドも同じという事態が起こっている。

現実も変わる。現実が変化した時またこの作品を見ると違った視点が得られると思う。完成度の高い映画だ。