『雲のように風のように』1990年に放送されたテレビ特番の名作アニメ

1990年にテレビで放送されたという「雲のように風のように」というアニメを見た。

僕は見たことはないし、世代でもないのになぜだか知っていたアニメだ。知っていたのは名作アニメとして扱われているからだろう。どこかで紹介されていたのを見て、いつか見たいと思っていた。

 

雲のように風のように』はテレビの特番

このアニメは80分である。最初は映画作品だと思っていたけれど、違った。テレビアニメの特番として制作された作品であるらしい。そう考えるととてもクオリティの高い作品だと思う。

当時はなんとCMなしで一気に放送されたらしい。テレビ局の気概を感じる。バブル時代の恩恵と言うべきか。

雲のように風のように』には原作がある。原作は酒見賢一の『後宮小説』で、これは第1回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しているらしい。この賞は2013年に終わっていたようだが、ちょうど今年に復活するらしい。

 

あらすじと感想

17世紀初頭、中国とおぼしき架空の国で皇帝が逝去。新皇帝の後宮に国中から少女たちが集められることに。妃になれば三食昼寝付と聞いた田舎娘の銀河も入宮することとなる。
宮中の常識にとらわれない自由奔放な銀河の正妃への道程と、新皇帝の座を巡っての陰謀、さらにそんな国情を逆手にとっての謀反の勃発といったドラマが入り乱れ、コミカルながらも壮大な偽史が描かれる。

権力争いになぜか巻き込まれることになってしまった少女が主人公の物語だ。ほとんどコミカルに描かれているが、そこに大人のドラマがほんのりと入り込んでいる。そのバランスが子供向けのアニメとしては秀逸だと思う。

 

テレビの枠という限られた時間の中で、よくもまあ壮大なストーリーをまとめ上げたなと思う。展開はかなり駆け足だが、強引さは感じない。

子供向けアニメなのですこぶるわかりやすい。起承転結がとてもはっきりとしていて、それがいいのだろう。ディティールは荒っぽいけど、こうして基本構成がしっかりしていれば、最後まで集中して見れるものなのだなと思った。

映画によくある隠れたメッセージとか「このシーンはこの比喩なのだ」とか込み入った表現がないので頭を使わずに見れる。その分、足りないディティールを自分の想像を膨らませながら見る余剰があって、それが良かったのかもしれない。

 

そうして子供向けとして、たかをくくって見ていたが、終盤にかけてはシリアスで意外な展開があった。コミカルさの反動でそのシリアスなメッセージが強烈に伝わってきた。この部分に僕はとても心惹かれた。

主人公の銀河が正妃になるところまではすんなりと行く。そんなタイミングで反乱軍が国に攻めて来て王は窮地に立たされるが、この反乱軍の首謀者は、実は銀河が正妃になる前にわりと好意的な形で知り合っている人物である。反乱の理由も「退屈だから」という程度のもの。

というわけで、誰にも分け隔てのない天真爛漫な銀河が中立となり、王と反乱軍を引き合わせて平和的に大団円、というような気持ちのよいスッキリとした終幕になるのかと思ったが、これは僕の安易な想像にすぎなかった。

反乱軍が随分コミカルに描かれていたのでそう思ってしまったのだが、そこまで子供向けのストーリーではなかったようだ。

権力を獲得した男の心境の変化と、権力を持って生まれてしまった男の苦悩がうまく描かれていた。

 

映像の荒さとか劇伴のベタさとか主題歌の時代感とか、初めて見るのにどこか懐かしさを感じた。なにかこう人の温かみというか、優しさを感じた。やはり名作だった。見て良かった。