アルファベットのDのことを「デー」と発音する理由を自分で発見したとき、僕も大人になったなと感じた

「大人になったな」と自分でしみじみと思うときはどんなときだろうか?

初任給をもらったとき?大きな仕事を任されたとき?はたまた、初めて恋人ができたとき?

「自分も大人になったなあ」なんて瞬間は色々とあると思うけど、僕が大人になったなあと感じたのはアルファベットのDのことを「デー」と発音する理由を自分で発見したときだ。

 

「ディー」なのに「デー」と発音するおっさんたち

ときは小学生時代に遡る。

校長先生の朝礼のスピーチなんかでよく聞いたイメージがある。おっさんたちはアルファベットのDのことをなぜだか「でー」と発音するのだ。

英語を学んだことのない小学生ながら、アルファベットの26文字くらいは知っている。ABCの歌で知っている。というわけで「デーってなんだよ、デーって」ってという話になる。

おっさんが言う「デー」とはどうやら「ディー」のことらしい。これを小学生時代の僕は「なんでこんな発音するんだろう」とは捉えず、単純に面白いこととして捉えていた。

僕の周りもそうだったように思う。半分バカにしていた。整列して朝礼を聞く前後の仲のいいクラスメイトと顔を見合わせて笑っていたような記憶がある。「多分歳をとったら舌が回らなくなるんだよw」なんて言っていたのを覚えている。

それが気になりだすと、周りの大人たちが「D」をどう発音しているのか観察し始めた。若い担任はちゃんと「ディー」と発音していた。概ねおっさん、年齢が高くなってくると「デー」と言っていたから、「高齢になると舌が回らなくなる説」が小学生の僕たちの間では濃厚だった。

そしてそのまま「Dをデーと発音する問題」は忘れていった。

 

ある時の話し合いで

ある時、いつだったか、もう20歳は超えていたと思うが、曲作りのアイディアをバンドメンバーと練っていた。いくつかある案をアルファベット順に分けてああでもないこうでもないと、メンバー宅でうだうだと話し合っていた。

案が5つくらいある。A、B、C、D、Eまである。これらの案を並行して

「じゃあAは?」「いやーBじゃね」「Dも捨てがたい」

なんつって話していると、どうも話が噛み合っていない。なんだか話が合わない。なぜだろう。

掘り下げてみると、そもそも、B、C、D、Eが認識できていなかったのだ。各々聞き間違いをしていて、重要な記号、主語を間違ったまま話が進んでいた。普通の会話のスピードで話していると、意外と聞き取りづらいのだ。これじゃあ話は進まない。

A、B、C、D、E、これらの4つのアルファベットは語尾が全て同じである「ビー」、「シー」、「ディー」、「イー」。全て語尾が「イー」だから聞き取りづらいのだ。

分かりやすく分類するために記号としてアルファベットを使っているのに、話し合いで使うと聞き取りづらくてしょうがない。アルファベット順のグループ分けは、紙に書いた字面でははっきり分類できているけど、会話には向かないのだ。

 

中学の初めての英語のテスト

この時に思い出したのが中学の時の最初の英語のテストだ。中学から始まった英語という教科。みんな横並びだ。その時のテストは「アルファベットを全て書け」などというレベルのものだった。最初だからだ。みんなが100点を取れる内容だった。

しかし以外にも100点は少なかった。僕も100点を取れなかった気がする。なぜならそのテストには聞き取りの問題があり、これが難関だったのだ。そこで出たのが「B」と「V」の発音問題。

確か、「◯ィー」と発音された音源が流れて、「今、アルファベットの何を発音したでしょーか?」みたいな単純な聞き取りテストである。

この問題は絶対に出るだろうと噂されていた。というか、先生が「出るよー」と言っていたような気もする。中学1年生当時、Vをブイと発音しないという事実は、一般の公立中学生の僕にとっては大変なる衝撃だった。

果たして「ビー」か「ヴィー」か。音源は2回しか言わない。音源だから口の形もわからない。考えれば考えるほど、BにもVにも聞こえてくる。これは日本人の僕には難しい問題だった。

 

テストの後は、「いやー普通にVだろー」「いや、あえてのBじゃね?」などと、VだったかBだったかという話題で持ちきりだった。

そんな時に「いや、Dだよ」と言い出した奴がいた。

この発言、僕は目から鱗だった。ほとんどのやつがBかVかの2択で悩んでる時に、そいつはもっと広い視野を持っていた。確かに言われてみればDだった気もする。確かに、「BかVか答えよ」という2択問題ではないのだ。かなりの引っ掛け問題なのかもしれない。だんだんとそんな気がしてきた。

 

こんなことを思えているのに、実際の答えはなんだったかは覚えていない。僕が正解できたのかも覚えていない。僕は悩んだ末、自分の耳はあてにならなかったので「英語を知らない僕たちにとってVという発音が特殊だから答えにするだろう」ということでVと書いた記憶はあるのだが。

 

アルファベットのDのことを「デー」と発音する理由

無駄話が長くなってしまった。上でもう書いたようなものだが、Dを「デー」と発音する理由を書こう。

アルファベットの「D」を間違っているのにもかかわらず「デー」と発音する理由は、聞き分けやすくするためである。これだけだ。

これは他人への配慮なのだ。アルファベットをグループ分けの記号として扱う場合、本来の発音なんてどうでもいい。違いがわかればそれでいいし、もっというと違いを分かりやすくするためにしているのだから、一聴して聞き取りやすくあるべきだ。

普通に「ディー」と発音してしまうと、「ビー」や「イー」とも聞き間違いかねない。だからどれとも被らない「デー」と発音するのだ。「エー」「ビー」「シー」「デー」「イー」これなら口頭での分類もスムーズに運ぶ。滑舌の悪い人が発音しても伝わる。

滑舌が良く喋りが達者な人なんて一般社会にそうそういない。みんなそれぞれに喋りの癖を持っている。ということは自分にも自分でわかっていない癖がある。そういうことを踏まえると「デー」と発音する方がいいのだ。記号を記号として伝えるためだ。

 

当然、年老いて舌が回らなくなったからではないのだ。この理由を僕は20歳そこそこで初めて気がついた。その時に他人への配慮だったと知り、小学生の時に笑ってバカにしていたことを恥ずかしく思い、ひとつ大人になったなと感じた。

僕も今後は記号としてアルファベットを使うなら、Dを「デー」と発音しようと思った。