【NHKスペシャル】『終わらない人 宮崎駿』 短編『毛虫のボロ』製作秘話と今後の長編製作について

NHKスペシャルの「終わらない人 宮崎駿」という番組を見た。これは2016年の10月までの約2年間、700日に渡ってNHK宮崎駿を取材したドキュメンタリーである。貴重な映像だ。

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引退宣言から3年

世間を賑わせたあの引退宣言からもう3年の月日が経っているらしい。早いものだ。そして宮崎駿ももう75歳。完全におじいちゃんである。

3年前の引退宣言は、引退とは言っても、「長編映画は作らない」という宣言だった。というわけで今、宮崎駿は12分の短編映画を作っていた。

このNHKスペシャルではその短編映画を作りながら試行錯誤している宮崎駿の姿が見られた。

 

宮崎駿が幻の企画に着手

この12分の短編映画というのは三鷹の森ジブリ美術館のみで放映されるアニメーションだ。そしてこの企画というのがもう20年ほど前からあった企画であるらしい。

『毛虫のボロ』と題された、毛虫が主人公の物語だ。この企画は僕も昔に聞いたことがある。確か「もののけ姫はこうして生まれた。」というドキュメンタリーで見た記憶がうっすらある。

当時、「もののけ姫」を作るか「毛虫のボロ」を作るか悩んでいる宮崎駿がいた。悩んだ末、ジブリは「もののけ姫」を選んだのだ。

この理由は「体力があるうちに本格的なアクションを作っておきたい」というものだったと思う。アクション映画を作るにはどうやらかなりの体力が必要らしい。というわけで少しでも若く、体力のあるうちにまずは「もののけ姫」を作っておこうという判断だった。

そして出来上がった「もののけ姫」は大ヒット。ジブリの判断は正しかった。

 

そんな名作「もののけ姫」と企画を争った「毛虫のボロ」に宮崎駿が着手するという。それも、これまで宮崎がやったことがないCGアニメーションで。

御歳75になってもCGアニメーションという宮崎にとって新しいものへの挑戦をする姿勢がすごい。ほとんどゼロからのスタートになるのだ。

 

このアニメを作るにあたって、CG制作に長けている若くて優秀なスタッフを揃えてくるジブリ。最初はうまくいきそうだと嬉々として企画がスタートする。しかし物事はそんなにうまくはいかない。宮崎駿のチェックが厳しいのだ。

ここには表現に対する宮崎のこだわりがつよく感じられた。CGの動きを事細かにチェックし指示していた。

引っかかったポイントとなっていたのは毛虫のボロが卵から孵る最初のシーン。

毛虫の動きに対して不満があるようで、なかなか次へ進めない。そこにはアニメで培った宮崎駿ならではの表現のこだわりがあった。


例えば、毛虫が卵から孵るときの、卵からはみ出る毛の躍動感などにこだわるのだ。

実際は卵から孵るとき、毛は濡れているはずだから、毛の動きなどないはず。しかし、アニメとして宮崎が作る場合、卵から乾いた毛をピンっとはみ出させる。こうすることで、見ていて気持ちいいシーンになる。そこには躍動感だったり、生命力、可愛らしさが感じられる。

アニメは現実世界とは違う表現ができる。気持ちいところはより気持ちよく表現ができる。どこをどうオーバーに表現するかというのがセンスなのだろう。繊細な表現の連続だ。

 

プロデューサーの鈴木敏夫が「宮さんは好きなものを実際よりも大きく書く」と何かの媒体で言っていたのを思い出した。

 

宮崎、長編やるってよ

この映像の撮影中も、共にアニメを製作してきた仲間の訃報がいくつか届く。「葬式が多い」と語る宮崎。もうおじいさんなのだ。

それでもなお、宮崎駿は長編映画を作るかもしれない。

企画書を鈴木プロデューサーに見せているシーンがあった。工程表での完成は3年後。「製作中に死ぬかもしれない」と笑いながら語る宮崎。「宮さんが死ねば映画は大ヒットですよ」と笑いながら語る鈴木。なんだかかっこいい、いい関係性だ。

 

おわり

おわりに、この番組で宮崎駿が映画についての自分の思いを語っていたので書いておく。この言葉に宮崎駿の映画観が集約されている。

 

「自分が好きだった映画はストーリーで好きになったんじゃない。
ワンショット見た瞬間に『これは素晴らしい』って
それが映画だと思ってる 」

宮崎駿

 

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