尾原和啓の「プラットフォーム」読了。GoogleとAppleの違いと楽天の可能性。

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尾原和啓さんの「ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?」を読んだ。こういうのも読んだほうがいいのかなと思って、軽い気持ちでポチっていたのだが、とても面白い本だった。

いろいろとタメになる話が多かった。この本ではGoogleApplefacebookなどの多国籍企業を、企業ごとの共有価値観から読み解いていた。

 

GoogleAppleの違い

素人目には競合しているように見えるグーグルとアップル。アンドロイドとiOS、グーグルグラスとApple Watchなど、検索サービスだけだったグーグルがアップルを追走していった形に見える。

これを両企業の共有価値観から読み解くと、その違いがわかるという。


グーグルの共有価値観

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ぜひ考えていただきたいのは、このビデオに秘められたグーグルの哲学が何かということです。
それをひとことで言うと、「マインドフルネス(Mindfulness)」だと私は考えます。

余計な雑事はグラスが自動的に処理してくれるので、メールを気にせずにハムエッグサンドを大事に味わい、かわいいワンちゃんと触れ合う心の余裕を持ち、ポスターを見たときにウクレレをやりたいと思っていた自分に気づくことができたのです。

機械ができることは機械がやり、人間にしかできない、今、目の前にある現実やそこに広がるか可能性に集中してもらう___その発想こそがマインドフルネスです。

 

 

アップルの共有価値観

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注目していただきたいのは、タイトルにある「ユア・ヴァース(Your verse)」という言葉です。公式には「あなたの物語は何ですか?」と訳されていますが、実際の意味合いは少し異なり「ヴァース」は「韻文詩」などを意味する言葉です。

このコンセプトビデオを通して、アップルは私たちに「人類は『ヴァース』を作る情熱を持っているのだ」という共有価値観を伝えているのです。

もちろん、アップルは私たち一人ひとりに人生のアドバイスをくれるわけではありません。しかし「私たちはあなたの情熱を拾い上げて、あなただけの『ヴァース』を生きられるように手助けをします」と背中を強く押す。「iPad」はそうしたアップルの共有価値観を込めてつくられた、表現のためのデバイス(装置)だったのです。

 

グーグルのサービスが、日常の煩わしい時間を短縮する。その空いた時間で心の余裕ができ、今まで見えてこなかった幸せを体感できる。

アップルは製品を通して、ユーザーに新しい価値観と、手助けを与える。その製品を使って豊かな自分の人生を築いていく。アップル製品を使って自己実現をしようということだ。

 

製品やサービスも、そういう共有価値観から生まれたものだという理解をすると、見えてくるものがある。こんな風に企業を紐解いてみると世界が見通せるというのがこの本の肝の部分だった。ただ製品やサービスを比べるということよりも、極めて本質的だと思った。

僕はiPhonemacなどアップル製品が好きだしよく使っているけど、共有価値観に賛同するのはどちらかといえばグーグルの方だった。考え方によっては、グーグルはサービスによって1日24時間という時間をもっともっと増やしてくれるのだ。今開発中の自動運転にはとにかく期待大だ。

 

 

楽天の可能性

僕は楽天のサイトは嫌いだった。ごちゃごちゃしていて、どこに何があるのかパッと見ではわからない。この本にはそんな僕に考えを改めさせる一文があった。

 

こうした楽天のデザインを、欧米のECサイトのようなすっきりしたデザインと比較して、批判をしている人もしばしば見かけます。しかし、その人たちは「目的がはっきりしている状態で商品を探すためのインターフェイス」と、「目的が必ずしもはっきりしない状態で、なんとなく商品を買いたくなるインターフェイス」が、まったく別のロジックで設計されるものだということを忘れていると思います。

つまり楽天は、「商品を買いたくなるインターフェイス」なのです。言い換えれば、楽天は目的を持ってすぐに買い物を終わらせたい「検索買い」ではなく、迷うことも楽しむウィンドウショッピングの方な「探索買い」なのです。

 この「検索買い」「探索買い」という言葉だけで、Amazon楽天の違いがわかりやすくなった。

インターネットの思想に近いのはAmazonだと思う。インターネットは能動的なものだからだ。自分から欲しいものを探しに行く。

だけどLINE普及以降の、いわゆるリア充一般人のニーズには楽天の方が合っているのかもしれない。楽天の「探索買い」の方がより現実に近いからだ。街に出てウィンドウショッピングをする感覚。

スマホの時代になって「探索買い」の方が増えていくと著者は予測している。その理由が、ユーザーの姿勢にあるという。

 

PCに向き合う姿勢をスマホを操作する姿勢と比較して、前者は「リーンフォワード(前傾姿勢)」、後者は「リーンバック(体を後ろに傾ける)」と呼ばれていますが、この「リーンバック」の時代になるほどインターネットへの向き合い方は受動的になり、ソファやベッドでだらだらと使うものになってきているのです。
つまり、「これを買う」という目的もなく「なにかほしいものがあったかな」と探索しながら買い物をするようになるのです。

スマホの普及によってインターネットがより生活に入り込んで、日常的に扱えるようになったという環境の変化が、「探索買い」につながるというのだ。

ネットが現実に違和感なく溶け込んでいる。「ツールとしてこうやって便利に使う」というちょっと肩肘張った使い方ではなく、生活の延長上にインターネットが存在していて、ネットが生活の自由度をあげる存在になっている。ツールとしてより使いやすく、深くなってきたのだ。

人間の身体性と絡んでいる考察ですごく面白いと思った。

 

この本を読むまでの印象として、楽天はコボなど電子書籍で失敗しているイメージだったり見にくいサイトのデザインだったりで、個人的にはあまりいいイメージはなかった。やはりAmazonのほうが伸びていくのかなと思っていた。

だけど、この本を読んでみると楽天もまだまだ伸びていきそうだなと感じた。日本は日本なりの戦い方がありそうだ。


ITの分野では日本の企業は力が及ばない印象がある。でもこの本を読んで日本の企業も独自の進化を続けているのだと知った。

書ききれないが、リクルートの戦略や、iモードの戦略など日本ならではの考え方で成功している興味深い例も知れた。

著者の尾原和啓さんは自身を楽観的と語るが、読んでいる方も未来に対して楽観的に前向きになれるいい本だった。

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