僕は少しだけ上下する。休憩中に起きたこと。

とある現場での仕事の休憩で、バス停とか駄菓子屋の前によくあるような、安っぽいつくりのベンチに座った。

雨ざらしの場所にあり、ところどころ傷んでいる。足は少し錆びていて歪んでいる。座るとガタンと自分の方に傾いた。

そこへ同じタイミングで先輩も休憩しに来た。僕の隣に座る。


ガタン。先輩の方にベンチが傾く。

その瞬間から僕は蛇に睨まれたカエルのごとく、微動だにできなくなった。このバランスを、僕の方からは崩すわけにはいかない。

。。。


この先輩というのはいつもテンション高めで、僕はなんとなく苦手としている人だ。

休憩だし、僕は僕でゆっくりひとりで休みたい。なので、真剣な顔をしてスマホを眺めて、話しかけてこないでねオーラを出す。だけど、この先輩はそんなことはおかまいなしに話しかけてくる。

先輩だし歳も僕より上なので、スマホを持ちながらもそれなりにちゃんと相槌をうって話を合わせていた。


テンションが高いその先輩は、話が盛り上がってくると、身振り手振りが入ってくる。その時に少し腰が浮くのか、ベンチがガタンと動く。足を組み替えたりしても、ガタンと動く。もちろん、そのたびに隣の僕は少し上下する。


なんだかコントになるような風景だなと思った。


俯瞰で見れたらきっと面白かったと思う。相手のリアクションをさほど気にせずに熱心に一方的に喋り続けるおじさんと、適当に聞いたふりしてる少しだけ上下するおじさん。

ガタンガタン。

熱心おじさんの体重移動とともに、隣で少しだけ上下するおじさん。

ガタンガタン。ガタンガタン。

。。。



さすがに熱心おじさんも気がついたのか、動きはなくなった。それとともに、話もしぼんでいった。テンションが高い人だから、気がついたとしたら、その安っぽいベンチに悪態の一つでもつきそうなものだけど、何も言わなかった。ちょっと恥ずかしく思ったんだろうか。ベンチに対して、二人とも最後まで何も言わなかったのが可笑しかった。

最近の出来事だけど、その時にどんな話をしたのか全く覚えていない。

 

 

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